子宮がん検診結果を正しく理解しましょう【産婦人科ガイドラインに準拠】
子宮がん検診の結果の解釈について
子宮がん検診の結果を受け取って、「要精密検査」という結果が来た場合、戸惑う方もいるかもしれません。しかし、これは冷静に次のステップに進むための重要なサインです。結果の正しい意味を理解し、適切に対応することが大切です。
この記事では、日本の産婦人科診療ガイドラインに基づき、子宮頸がん検診の結果をわかりやすく解説します。お手元に結果通知があれば、ご自身の状態と照らし合わせて確認していきましょう。
1. 子宮頸がん検診でわかること
子宮頸がん検診では、子宮の入り口部分(頸部)の細胞を採取して、異常がないかを調べる「細胞診」が行われます。この検査は、がんの可能性がある細胞を見つけ出すためのスクリーニング(ふるい分け)です。
【扁平上皮細胞と異形成とは?】
子宮頸部の表面は、うろこ状に平べったい「扁平上皮細胞」という細胞で覆われています。子宮頸がんの多くは、この扁平上皮細胞から発生します。
「異形成」とは、細胞の形や大きさが正常とは異なる状態を指します。これは、細胞ががんへと変化していく途中の段階と考えられており、子宮頸がんの多くは、この異形成という段階を経て、長い時間をかけてゆっくりと進行していきます。異形成には軽度、中等度、高度の3つの段階があり、検診結果のLSILやHSILは、この異形成の程度を示しています。
2. ガイドラインに基づく結果の分類と対応
以下に、子宮頸がん検診の結果で用いられる主な分類と、日本のガイドラインで推奨される対応をまとめました。
分類 | 日本語での名称 | ガイドラインに基づく推奨対応 |
NILM | 陰性 | 異常なし。次回の定期検診(1~2年後)を推奨します。 |
ASC-US | 意義不明な異型扁平上皮細胞 | HPV検査を行います。HPV陽性の場合は精密検査へ。HPV陰性の場合は定期検診(1年後)となります。 |
LSIL | 軽度扁平上皮内病変 | HPV検査を行います。HPV陽性の場合は精密検査へ。HPV陰性の場合は定期検診(1年後)となります。 |
ASC-H | 高度異形成を否定できない異型扁平上皮細胞 | HPV検査の結果を待たずに、すぐに精密検査(生検など)を行います。 |
HSIL | 高度扁平上皮内病変 | HPV検査の結果を待たずに、すぐに精密検査(生検など)を行います。 |
SCC | 扁平上皮がん | 速やかに精密検査(生検など)を行い、治療方針を決定します。 |
AGC | 腺異型または腺癌疑い | 精密検査(生検など)へ。 |
AIS | 上皮内腺癌 | 速やかに精密検査(生検など)を行い、治療へ。 |
Adenocarcinoma | 腺癌 | 速やかに精密検査(生検など)を行い、治療へ。 |
other malignancy | その他の悪性腫瘍 | 速やかに精密検査(生検など)を行い、治療へ。 |
3. 「要精密検査」は確定診断ではない
「LSIL」「ASC-H」「HSIL」、「AGC」などの結果は、異形成の可能性を示唆するものです。精密検査は、この可能性をより詳しく確認するために行われるステップです。
精密検査では、コルポスコピーという拡大鏡で子宮頸部を詳しく観察したり、疑わしい部分の組織を採取して病理検査を行ったりします。この精密検査によって、最終的な診断が確定します。
4. 次の行動が健康を守る
子宮頸がんは、適切な検診と治療によって予防や早期発見が可能です。検診で異常が見つかった場合、それは病気の兆候を早期に捉えられたということになります。
担当医に結果について詳しく聞き、指示された通りに精密検査を受けることが、ご自身の健康を守るための最も重要な行動です。
子宮がん検診の結果を正しく理解し、冷静に次のステップに進むことが、健康の維持につながります。