マンモグラフィ検査の精度について
乳房の内部をX線で映し出すマンモグラフィは撮影されたのちに医師により読影され診断されます。
「読影(どくえい)」とは、医療分野で使われる専門用語で、CT、MRI、X線(レントゲン)、超音波(エコー)などの検査画像を、医師が詳細に観察し、病気の有無や状態を診断する行為のことです。
読影の主なプロセス
- 画像の観察:撮影された画像を、高精細な専用モニターで隅々まで注意深く見ます。
- 異常所見の発見:病変(しこり、影、石灰化など)がないかを探します。
- 診断:見つかった異常が、どのような病気や状態であるかを判断します。
- 報告書の作成:読影で得られた所見や診断結果を、画像診断報告書としてまとめます。
読影を行うのは誰か?
マンモグラフィ読影は医師により行われます。専門的な知識と経験が必要なため、日本ではNPO法人日本乳がん検診精度管理中央機構、通称「精中医機構」の試験を受け合格した医師にマンモグラフィ読影認定医の資格が得られます。
精中機構が認定医制度を設けているのは、日本の乳がん検診の質を均一に高く保つためです。マンモグラフィの読影は、医師の経験や知識に大きく左右されるため、この認定制度は読影医のスキルを客観的に評価し、一定水準以上の能力を保証することを目的としています。
なぜ読影が重要なのか?
- 病気の早期発見:特にがんなどの病気は、初期段階では自覚症状がないことが多く、画像検査でしか発見できない場合があります。読影を正確に行うことにより早期発見が可能になります。
- 正確な診断と治療方針の決定:読影によって得られる情報は、病変の大きさ、広がり、悪性度など、治療計画を立てる上で不可欠です。
認定医の精度・マンモグラフィの「見落とし」
精中機構の認定医は、読影試験の結果が感度(病気を病気と診断できる確率)・特異度(病気でないものを病気ではないと診断できる確率)ともに一定水準以上(80%以上)と認定されています。読影試験では一般診療で目にする確率より多くのがんの病変のある画像が使用され、すべて正解することが一般診療よりも難しい試験となっています。
ダブルチェック(2名の医師による読影)が行われると見逃しの生じる確率はさらに小さくなります。当院の乳腺外科はすべての医師が読影認定医の資格を保有し、院内でもトリプルチェック(3名の医師による読影)が行われ見逃しを極力ないようにしています。
どんなに優れた医師が読影しても、マンモグラフィの特性上、すべてのがんを発見することは難しいとされています。
主な要因は以下の通りです。
- 高濃度乳腺(デンスブレスト):乳腺の密度が高く、がんの病変が乳腺に隠れてしまい、画像上では見えにくいことがあります。日本人女性にはこのタイプの乳腺が多いとされています。超音波の併用や3Dマンモグラフィの追加で隠れていた病変があらわれるようにします。
- がんのタイプや大きさ:非常に小さいがんや、石灰化を伴わないタイプのがんは、見つけにくいことがあります。
これらの要因は、読影医のスキルに関わらず、マンモグラフィ検査自体の限界に起因するものです。
精中機構の認定医は、高い専門性と信頼性を持っています。 この認定制度があることで、読影医の質が維持され、見落としの確率は最小限に抑えられています。
しかし、前述の通り、マンモグラフィ検査の限界から、がんが見落とされてしまう可能性はゼロではありません。そのため超音波検査を併用し、検診は1回受けて終わりではなく、定期的に継続して受けることが非常に重要です。また、しこりや乳頭からの分泌物など、何か自覚症状がある場合は、検診を待たずにすぐに医療機関を受診しましょう。