性感染症STDと不妊や妊娠に与える影響について【産婦人科専門医が解説】
2025.11.20
💔 性感染症(STD)と不妊・妊娠への影響
知っておきたいリスクと予防
性感染症(STD)は、コンドームを使用せず、性行為を通じて感染する病気の総称です。その中には、適切な治療を受けずに放置すると、将来の不妊の原因となったり、妊娠経過や胎児に影響を与える可能性があるものがあります。特にクラミジアや淋病などは注意が必要です。
👶 不妊の観点から見た性感染症のリスク
性感染症は、男女ともに生殖器官に炎症を引き起こし、不妊の原因となる可能性があります。
👩 女性の場合
- 卵管炎・卵管閉塞:クラミジアや淋菌などが子宮から卵管に広がり、炎症を起こします(卵管炎)。炎症が慢性化すると、卵子と精子が出会う通り道である卵管が閉塞したり、癒着したりすることがあります。これは「卵管性不妊」の主要な原因の一つであり、女性不妊の原因の20%を占めるとも言われています。
- 慢性子宮内膜炎:マイコプラズマやウレアプラズマといった菌が、子宮内膜に持続的に炎症を引き起こすことがあり、慢性子宮内膜炎と呼ばれます。慢性子宮内膜炎では、受精卵が子宮内膜にくっつく着床が障害され、不妊の原因となることがあります。
- 子宮外妊娠(異所性妊娠):卵管の炎症によって卵管の機能(卵を運ぶ蠕動運動など)が損なわれると、受精卵が子宮にたどり着く前に卵管内で着床してしまう**子宮外妊娠**のリスクも高まります。
👨 男性の場合
- 精巣上体炎:クラミジアなどが尿道から精子の通り道である精巣上体に炎症を引き起こすことがあります(精巣上体炎)。
- 精子の質・通り道の障害:炎症が精管(精子の通り道)まで及ぶと、精管が詰まることで無精子症になったり、炎症の影響で精子の数や運動率が低下したりすることがあり、男性不妊の原因となります。
- その他の性病:HPV(ヒトパピローマウイルス)やマイコプラズマなども、精子の運動率の低下など男性不妊との関連が指摘されています。
🤰 妊娠の観点から見た性感染症のリスク
- 流産・早産:クラミジアやマイコプラズマ・ウレアプラズマなどの感染は、子宮頸管炎などを引き起こし、流産や早産のリスクを高める可能性があります。
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分娩時の産道感染:出産時に母親の産道に性病の原因菌がいると、赤ちゃんがその菌にさらされて感染してしまうことがあります(産道感染)。
- クラミジア:新生児の結膜炎や肺炎の原因となります。
- 淋病:新生児の失明につながる可能性もある重度の結膜炎(淋菌性眼炎)の原因となります。
- 胎内感染:一部の性感染症(梅毒、HIVなど)は、妊娠中に胎盤を通じてお腹の赤ちゃんに感染し、先天性の異常や重篤な疾患を引き起こすことがあります。
✅ 予防と早期発見が未来の妊娠を守る
性感染症の中には、クラミジアのように感染しても自覚症状がないケースが非常に多いものがあります。そのため、気づかないうちに不妊のリスクを高めてしまったり、妊娠が分かってから初めて感染が判明したりすることもあります。
将来の妊娠を望むのであれば、以下の点に留意することが大切です。
- 予防の徹底:性行為の際はコンドームを正しく使用し、感染リスクを減らしましょう。
- 定期的な検査:複数のパートナーがいる場合や、心当たりのある行為があった場合は、症状がなくても定期的に性病検査を受けましょう。特に妊活を始める前や結婚前には、ブライダルチェックとして性病検査を受けることが推奨されます。
- 早期治療:万が一感染が判明した場合は、パートナーと共に速やかに完治するまで治療を受けることが重要です。早期に治療すれば、不妊などの後遺症を防げる可能性が高まります。