小学生や若い世代の生理痛や月経のトラブルについて
みなと横浜ウイメンズクリニック
産婦人科専門医が解説
【保護者・若い世代の方へ】
生理痛は我慢しないで!思春期の月経困難症に治療法があります
1
生理の悩みは「病気」かもしれません
思春期のお子様、そして若い世代の皆様、毎月の生理痛や生理前の不調で、「学校に行けない」「集中できない」「気持ちが不安定になる」といった悩みを抱えていませんか?
「生理痛は我慢するもの」「まだ若いから大丈夫」と捉えられがちですが、それは誤解です。ひどい生理痛(月経困難症)は、子宮内膜症などの疾患が原因となっていることもあり、適切な治療が必要な状態です。
まだ初潮を迎えたばかりの小学生のお子様でも、生理による生活への支障がある場合は、ぜひ一度 産婦人科医にご相談ください。症状に合わせた治療選択肢があります。
2
症状に合わせた治療の選択肢:まずは身近なお薬から
患者様の症状やご希望、生活スタイルに合わせて、複数の治療法があります。
①:鎮痛薬(痛み止め)を正しく使う
まず重要なのは、市販薬も含めた鎮痛薬(痛み止め)を「痛くなる前に、規則正しく」飲むことです。
-
鎮痛薬は、痛みが始まってからでは効果が落ちることがあります。痛みのピークを抑えるためには、症状が出始めたらすぐに服用することが大切です。
鎮痛薬だけでは痛みがコントロールできない場合、あるいは過多月経(経血量の多さ)やメンタル不調(PMDD)など、他の症状が強く出ている場合は、ホルモン治療が非常に有効な手段となります。
②:ホルモン治療薬の選択(LEP製剤、ジェノゲストなど)
ホルモン治療薬は、単なる痛み止めではなく、症状の根本原因である子宮内膜の増殖を抑えることで、生理痛や出血量を改善します。
| 治療選択肢 | 特徴 | 特に有効な症状 |
|---|---|---|
| ジェノゲスト | 黄体ホルモンのみの製剤です。主に子宮内膜症の治療に使われます。 | 生理痛の緩和、子宮内膜症の改善 |
| LEP製剤/ 低用量ピル |
エストロゲンと黄体ホルモンを配合したホルモン剤です。排卵を抑え、子宮内膜の増殖を抑えます。 | ひどい生理痛(月経困難症)、過多月経、PMDD(生理前のメンタル不調)の改善 |
過多月経による貧血や、生理前後の気分の落ち込み(PMDD)がひどい方には、LEP製剤(ピル)によるホルモン治療が、生活の質(QOL)を改善する上で特に有用です。
3
「ピルは怖い?」
「若いのにピルを飲んで大丈夫?」「副作用が心配」という不安を抱かれる方も多いと思います。クリニックではお子様の安全性を最優先した慎重な処方をおこなっています。
安全性について
ホルモン治療薬の中で最も重篤な副作用リスクは血栓症(血管に血の固まりができること)です。このリスクを最小限にするため、すべての初診時に以下のスクリーニングを行います 。
-
●
詳細な問診と血圧測定:
来院時に必ず血圧測定を行い、健康状態、ご家族の病歴、生活習慣を詳細に確認しリスク要因を医師が評価、処方の適否を判断します 。 -
●
保護者様へのご協力のお願い:
安全に継続して内服するため、特にお子様がまだ小さい場合は、保護者様のご理解とご協力が非常に重要です。治療方針については、保護者様とご本人様にご納得いただくことが重要です。
相談の入り口として
国・自治体の相談窓口も活用できます
医療機関への受診にためらいがある場合は、こども家庭庁が推進する「性と健康の相談センター」が全国の自治体に設置されています。
- 専門職が対応:助産師や保健師、医師などの専門家が、中立的な立場で相談に乗ってくれます。
- プライバシー保護:匿名で相談できる窓口も多く、相談内容の秘密は守られます。
- 幅広い相談内容:月経の悩み、避妊、妊娠・出産、体の変化など、性別を問わず幅広い悩みを相談可能です。
4
費用と継続的な服薬支援について
費用(自費診療となる場合)
治療目的のLEP製剤は保険適用となることが多いですが、避妊目的の低用量ピル(OC)を処方する場合や、一部の治療薬は保険適用外の自費診療となります。
低用量ピル(OC)の費用目安:
1シートあたり2,500円程度
継続的な服薬支援
ホルモン剤は、正しく飲み続けることが最も大切です。飲み忘れ時の対応プロトコルや、疑問が生じた際のフォローアップ(電話やオンライン診療も可能)を通じて、内服の継続を徹底的にサポートします。