ピルの飲み始めの不調や、やめた後の生理について【産婦人科医師解説】
2024.05.20
ピルの飲み始めの不調や、やめた後の生理について
【産婦人科医師解説】
※画像はイメージです
「ピルを飲み始めたら吐き気がする…」
「ピルをやめたのに、なかなか生理がこない…」
このような不安を感じていませんか?
低用量ピルは女性の生活をサポートする心強い味方ですが、飲み始めや飲み終わりには、ホルモンバランスの変化によって身体が少しびっくりしてしまうことがあります。
この記事では、よくあるトラブルの原因と、正しい対処法についてわかりやすく解説します。
目次
飲み始めたら「吐き気」が…。これって合わないの?
A. 最初の2〜3ヶ月は「身体が慣れるための準備期間」です。
飲み始めの吐き気は、薬に含まれる女性ホルモンによって、体内のホルモンバランスが一時的に変化し、体が慣れていないために起こる症状です。
決して身体に害があるわけではありません。工夫して乗り切りましょう。
おすすめの対策
- 寝る前に飲む: 吐き気のピークを寝ている間にやり過ごせるため、夕食後や就寝前の服用がおすすめです。
- 吐き気止めを使う: 市販の吐き気止めを一緒に飲んでも問題ありません。
多くの人は、1〜2ヶ月飲み続けると身体が慣れて、症状が消えます。まずは3ヶ月(3シート)続けてみることをおすすめしています。
生理じゃない日に出血があります(不正出血)。
A. これも「飲み始め」によくあるサインです。
ピルの効果で子宮の内膜が薄くなる過程で、パラパラと出血することがあります。これを「不正出血」と呼びますが、飲み忘れがなければ、避妊効果には問題ありません。
✅ 様子を見ていい場合
少量で、お腹の激痛などがなければ、そのまま飲み続けて大丈夫です。多くの人が3シート目くらいまでに止まります。
🏥 受診してほしい場合
「生理2日目のような大量の出血」や「いつまでもダラダラ続く(4シート目以降も)」場合は、一度クリニックにご相談ください。
一番怖い「血栓症」って、どんな症状が出るの?
A. 「ふくらはぎの片側だけが急に痛む」に注意してください。
ピルの副作用で最も気をつけたいのが、血管の中で血が固まってしまう「血栓症(けっせんしょう)」です。頻度はとても低い(1万人に数人程度)ですが、早期発見が大切です。
危険なサイン「ACHES(エイクス)」
これを感じたら、すぐに飲むのをやめて救急外来を受診してください。
- A (Abdominal pain): 激しいお腹の痛み
- C (Chest pain): 激しい胸の痛み、息苦しさ
- H (Headache): 割れるような頭痛、めまい
- E (Eye/Speech): 目が見えにくい、ろれつが回らない
- S (Severe leg pain): ふくらはぎの痛み・むくみ・赤み(特に片足だけ)
ピルをやめた後、生理がきません。妊娠できなくなっちゃうの?
A. ピルのせいで妊娠しにくくなることはありません。
ピル服用中にはご自身の卵巣は休んだ状態になっています。ピルを飲むのをやめると、休んでいた卵巣が再び働き始めて、ホルモンを出し始めます。
卵巣が動き出すまでの時間には個人差があり、すぐに生理が来る人もいれば、少し時間がかかる人もいます。
3ヶ月ルール(90日の目安)
ピルをやめた人の90%以上は、3ヶ月以内に自然な生理が戻ります。
「やめてすぐに生理がこない!」と焦らず、まずは3ヶ月ほど、身体のリズムが戻るのをゆっくり待ってみてください。
※その間、妊娠の可能性がある方は、妊娠検査薬で検査するようにしてください。
3ヶ月経ってもこない時は?
以下の可能性があります。
- 妊娠している: やめた直後の排卵で妊娠することもあります。
- 元の体質に戻った: もともと生理不順だった方は、薬の効果がきれて、元の不順な状態に戻っただけのことが多いです。
- 隠れていた病気: まれに甲状腺の病気などが隠れていることがあります。
「3ヶ月待ってもこない」ときは、一度クリニックで検査を受けましょう。
ピルをやめたらニキビが増えました…。
A. 抑えられていた皮脂の分泌が戻ったためかもしれません。
ピルには種類によりますが、ニキビの原因となる男性ホルモンの働きを抑える効果があります。服用をやめると、このブレーキが外れるため、一時的に肌荒れやニキビができやすくなることがあります(リバウンドのような状態です)。
💡 スキンケアを見直したり、皮膚科のお薬を併用したりすることで対策できますので、ひどい場合はご相談ください。
まとめ:ひとりで悩まず相談を
ピルのトラブルの多くは、身体が変化に適応しようとしている「一時的なサイン」です。
ただ、どうしても不安な時や、痛みが強い時は、我慢せずにクリニックにご連絡くださいね。
正しい知識を持って、快適なピルライフを送りましょう。
みなと横浜ウイメンズクリニック