放射線治療の肌トラブルはいつから?専門医が解説する皮膚炎の予防とセルフケア|みなと横浜ウイメンズクリニック
放射線科専門医が解説
放射線皮膚炎とは
〜原因・予防・治療の完全ガイド〜
治療中の不安を解消し、適切なケアを行うための情報をまとめました。
1. なぜ起こるのか
放射線治療は、がん細胞のDNAにダメージを与えて死滅させる治療法であり乳がんの術後や多くのがんの治療で行われていますが、放射線が体外から体内に入る際、通過経路となる正常な皮膚細胞(特に基底層の細胞)にも影響が及びます。
この影響は日焼けに似ていますが、生物学的にはより深い層で反応が起こるため、治療開始直後ではなく、開始から約2〜3週間後(10〜15回照射後)に症状が現れるのが特徴です。1
症状のタイムライン
治療開始〜2週間
目立った変化はありませんが、皮膚のバリア機能は低下し始めています。
2〜3週間目
照射部位が赤くなり(紅斑)、乾燥やかゆみが生じます。
4〜5週間目以降
炎症が強まり、皮膚がむけたり(落屑)、浸出液が出てジクジクした状態(湿性落屑・びらん)になることがあります。
治療終了後
終了直後〜2週間程度が症状のピークとなりますが、その後、新しい皮膚が再生され、1ヶ月程度で急性期の炎症は治まります。3
2. ご自宅でのセルフケア(標準予防策)
「優しく洗い、十分に保湿する」
※かつての「洗ってはいけない」「何も塗ってはいけない」という指導は現在行われていません。1
① 洗浄
(清潔の保持)
- 重要:皮膚を清潔に保つことは、感染予防の観点から最も重要です。
- 洗浄剤:「弱酸性」「低刺激」「無香料」のボディーソープや石鹸を使用。
- 洗い方:ナイロンタオル等は使わず、たっぷりの泡で手で撫でるように優しく。
- 乾燥:タオルで擦らず「押さえ拭き」で水分を除去。3
② 保湿
(バリア機能の補完)
- 最大要因:乾燥は皮膚炎を悪化させます。
- 保湿剤:処方されたヘパリン類似物質(ヒルドイド等)や保湿クリームを使用。市販品はアルコールフリー・無香料を。
- 回数:1日2回以上(入浴直後と起床時など)。
- 注意:照射直前は避け、照射後にたっぷりと塗布することが基本です。5
③ 衣服・環境
(刺激の回避)
- 衣服:締め付けの強い下着や襟の硬い服は摩擦の原因に。綿やシルクの肌着、ノンワイヤーブラジャーを着用。8
- 紫外線:治療中および治療終了後1年程度は、照射部位に直射日光を当てないでください。9
3. 症状が出現した際の治療
皮膚の状態(グレード)に合わせて、以下の薬剤を使用します。自己判断せず、必ず医師・看護師の指示に従ってください。
| Grade・状態 | 治療・処置の方針 |
|---|---|
| Grade 1: 軽度
わずかな赤み、乾燥、軽いかゆみ |
【保湿の強化】 処方された保湿剤をこまめに塗布し、乾燥を防ぎます。 |
| Grade 2: 中等度
明らかな赤み、強いかゆみ、部分的な皮むけ |
【ステロイド外用薬の併用】
炎症を抑えるため、リンデロンやアンテベートなどのステロイド軟膏を、赤みのある部分に塗布します。 塗り方の目安:
「1FTU(人差し指の第一関節分=約0.5g)」で手のひら2枚分を目安に、十分な量を乗せるように塗ります。11 |
| Grade 3: 高度
ジクジクした傷(びらん)、痛み、出血 |
【創傷処置への切り替え】
皮膚が剥けている部位には、組織修復を促すアズノール軟膏を使用します。 痛みが強い場合や浸出液が多い場合は、特殊な被覆材を使用することもあります。感染予防のため、毎日シャワーで優しく洗い流すことが重要です。11 |
【注意】感染のサイン
以下の症状がある場合は、担当医に連絡をしてください。12
- 照射部位からの排膿(膿が出る)、悪臭
- 急激な痛みや腫れの増強
- 38度以上の発熱
4. 治療終了後のケアと晩期の変化
治療終了後、数ヶ月から数年を経て現れる変化(晩期障害)についても、適切なケアで改善が期待できます。
(皮膚の黒ずみ)
経過半年〜1年程度で徐々に薄くなりますが、残ることもあります。
対策徹底した遮光(紫外線対策)を行ってください。
※気になる場合はハイドロキノンやトレチノイン、カバーメイクなどが有効ですが、医師にご相談ください。9
(ひきつれ・線維化)
経過皮膚が硬くなり、突っ張る感じがすることがあります。
対策 マッサージとストレッチが有効です。
※炎症が治まった時期(治療終了1ヶ月以降目安)から、保湿剤を使いながら優しく動かします。16
(赤い糸状の血管)
症状表面に細かい血管が浮き出て見えることがあります。
治療自然治癒は難しいですが、色素レーザー(Vビーム等)で改善可能です。
※一定の条件下で健康保険が適用される場合があります。