【医師解説】なぜ私だけ?治らない大人ニキビの正体とホルモンバランスの話
皮膚科・美容皮膚科コラム
「清潔にしているのにニキビが治らない…」
その原因、実はホルモン感受性の違いかもしれません。
今回のテーマは、多くの女性を悩ませる「大人ニキビ(Adult Female Acne)」について。
「毎日洗顔しているのにニキビができる」
「生理前になると必ず肌荒れする」
「周りの友達は不摂生しても肌が綺麗なのに、なぜ私だけ?」
こんな風に思ったことはありませんか?
実は、最新の研究では、ニキビは単なる「肌の汚れ」ではなく、全身のホルモンバランスや遺伝的な体質が深く関わる全身疾患として捉え直されています。
今回は、少し専門的ですが非常に重要な「ニキビができやすい体質」の正体と、治療の選択肢としての「ピル」の効果について、分かりやすく解説します。
1. 「ニキビができやすい人」と「できにくい人」の決定的な違い
同じような生活をしていても、ニキビができる人とできない人がいます。
これは単なる運ではありません。医学的には、以下のような「体内の仕組み」の違いがあることが分かってきました。
血液検査をしてもホルモンの量は「正常範囲内」と言われることが多い大人ニキビ。
実は、ホルモンの絶対量よりも、「ホルモンを受け取るアンテナの感度」や「ホルモンを無毒化するスポンジの量」に個人差があるのです。
① ホルモンを吸着するスポンジ「SHBG」が少ない
私たちの肝臓からは、SHBG(性ホルモン結合グロブリン)というタンパク質が作られています。
これは、血中の余分な男性ホルモンなどを吸着して無害化してくれる、いわば「スポンジ」のような役割を持っています。
- ニキビができにくい人:スポンジ(SHBG)が多く、ホルモンをうまくコントロールできている。
- ニキビができやすい人:スポンジ(SHBG)が少なく、ホルモンが野放しになり、肌を直接攻撃してしまう。
② アンドロゲン受容体(アンテナ)が敏感すぎる
皮膚には男性ホルモンをキャッチする「受容体(アンテナ)」があります。
遺伝的にこのアンテナの感度が高い方は、わずかなホルモン変動でも敏感に反応し、過剰に皮脂を出してしまいます。
2. なぜ生理前にニキビが悪化するの?
女性のニキビ患者様の約60〜85%が、生理前の1週間にニキビの悪化を感じています。
これは、排卵後に「プロゲステロン(黄体ホルモン)」が増え、肌を守ってくれる「エストロゲン(卵胞ホルモン)」が相対的に減ってしまうことや、むくみによって毛穴が物理的に詰まりやすくなることが原因と考えられています。
3. 経口避妊薬(ピル)がニキビに効く「3つの理由」
皮膚科で処方される塗り薬や飲み薬でも改善しない場合、選択肢の一つとなるのが「低用量ピル(OC)」です。
「避妊薬でなぜ肌が綺麗になるの?」と疑問に思う方も多いですが、実は理にかなった3つのメカニズムがあります。
- ホルモンの水源を絶つ:脳が「ホルモンは足りている」と認識し、卵巣からの過剰なホルモン産生を休ませます。
- スポンジ(SHBG)を増やす:ピルに含まれるエストロゲンが、ホルモン吸着スポンジ「SHBG」を劇的に(2〜3倍に!)増やし、肌荒れの原因物質を回収します。
- 肌のアンテナをブロックする:一部のピルは、肌の男性ホルモン受容体を直接ブロックし、皮脂分泌を抑えます。
4. ピル以外の対策:食事と生活習慣
体質改善のために最も重要なのが、「インスリンを急激に上げない食事(低GI食)」です。
インスリンが増えすぎると、肝臓でのSHBG(スポンジ)の合成が抑えられ、ニキビが悪化しやすくなります。
具体的な「低GI食」と「避けるべき食品」リスト
| ⭕️ 積極的に摂りたいもの (血糖値を上げにくい低GI食品) |
❌ 控えめにすべきもの (血糖値を急上昇させる高GI食品) |
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「絶対に食べてはいけない」わけではありません。特に生理前の1週間(黄体期)はインスリン抵抗性が高まり太りやすくニキビもできやすいため、この時期だけでも意識して「白」から「茶色」へ置き換えることをおすすめします。
5. 医師からのメッセージ
大人ニキビは、体内のホルモンバランスや遺伝的素因が絡み合った、れっきとした疾患です。
ご自身の体質を理解し、適切なケアを行うことで、肌は必ず応えてくれます。
当院では、一般的な皮膚科治療に加え、婦人科でのピルを用いたホルモン治療や漢方処方も行っています。
一人で悩まず、ぜひ一度ご相談ください。
ピルは高いニキビ改善効果が期待できますが、稀に血栓症などのリスクもあります(特に喫煙者、肥満の方、40歳以上の方など)。当院では、産婦人科専門医が必要な検査や問診を行い、リスクをしっかり評価した上で、あなたに最適な治療法をご提案します。